2019.8.28

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日中社会保障協定が2019年9月1日に発効-年金保険料の二重負担の解消-

2018年5月に日中間で社会保障協定(以下「協定」といいます。)が署名され、2019年9月1日に発効予定となっています。先日、在上海日本領事館にて説明会が開催されましたので、概要をお伝えいたします。

中国には、養老保険(年金)、医療保険、労災保険、生育保険、失業保険という5つの社会保険(いわゆる「5険」)があります。これまで、日本から中国へ派遣されて就労する場合、駐在員は日本での年金制度(国民年金・厚生年金保険)を継続納付することが通常であり、中国においても社会保険を納付する必要がありました。これにより、中国において年金を受給する可能性が少ないにもかかわらず、二重負担を強いられていました。なお、上海市では外国人の社会保険加入は任意となっています(したがって、影響があるのは上海以外の地域に派遣されている場合です。)。

協定では、制度上、就労している国の年金制度のみに加入することが原則となっていますが、雇用主により相手国に派遣された被用者については、例外的に派遣開始日から5年間は派遣元国の年金制度にのみ加入することができます(最大5年の延長が認められます。)。日本から中国へ派遣されて就労する場合、派遣元国である日本の年金納付のみで良いことになります。ただし、上記5険のうち、養老保険(年金)が対象となっており、その他の社会保険については納付の必要があります。

対象者は、「雇用主により相手国に派遣された被用者」であり、①現地採用の方、②自営業者として就労する方、③日本の年金制度に任意加入している方は除かれます。対象の「被用者」には、中国において「董事長」、「総経理」などの肩書であったとしても、日本の年金制度適用の被保険者となっている被用者であれば、含まれるとのことです。

協定の適用のためには、日本年金機構に対して「適用証明書」交付申請を行い、中国社会保険料徴収機関に対し、「適用証明書」を提出する必要があります。協定は、2019年9月1日発効予定ですが、2019年8月1日から「適用証明書」の交付申請を受け付けるそうです。協定発効後、本来、協定適用対象者が免除手続を失念して中国において養老保険を納付してしまった場合、後に還付の対象となりますが、中国における還付手続は煩雑であるとのことなので、お早めにお手続きください。

なお、外国人の社会保険が任意加入である上海市において、今後どのような取扱いがなされるかについては、上海市次第とのことで、今後の動向に注意する必要があります。